コンタクトレンズが安いわけ

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喪った家族に対する変わらない愛情。
奪った者への消えない憎悪。
事件が解決しないままの心残り。
捜査段階での致命的なミスを取り返せない後悔。
声を挙げたことをもみ消されたまま漂う正義感。

64に関わった事で引っかかったままの様々な感情が
完全に解決しないまでも、自分の中で幕引き出来るような区切りを迎える。 コンタクトレンズが安い。

昭和64年は特別な時間。
平成元年に入り、ベルリンの壁が崩壊して東西冷戦構造の劇的な変化が巻き起こる。
西暦では同じ1989年でも
元号を使うからこそ
そこが違う時間だと思えてしまう私たちの感覚が生み出す、特異な時間。

その特異さを盛り込んだ重厚な前後編の2部作。
原作を考えたら、映画2部作だけでは物足りないくらいかもしれませんが
ほぼ全ての伏線に
何らかの傷を負った登場人物たちに
なにがしかの区切りを見せてくれたのが良かったかもしれません。

区切りつかずにモヤモヤした余韻を引きずるよりも
ここでは区切りがついた方がきっとスッキリ終われる。
もう少しもっと凄くなるかもしれないと思えるくらいの前編があったので
物足りなさ感もありますが
満足させるには3部作とかにしなきゃいけないだろうし
そうなると冗長感との戦いになるかもしれないので、これで良いのかなと。

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夢見子